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東京地方裁判所 昭和61年(ワ)17106号 判決

原告 江戸川信用金庫

右代表者代表理事 川野安道

右訴訟代理人弁護士 浅井洋

被告 とみんファクター株式会社

右代表者代表取締役 塩路一郎

右訴訟代理人弁護士 上野隆司

同 高山満

同 田中博文

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  東京地方裁判所昭和五九年(ケ)第六一六号不動産競売事件について同裁判所が作成した別紙配当表中、被告に対する配当額を金一二四六万四六二一円、原告に対する配当額を金二〇〇〇万円と各変更する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  東京地方裁判所は、訴外木島良道、同木島はま子の共有であった別紙物件目録記載の各不動産(以下「本件各不動産」という。)につき昭和五九年(ケ)第六一六号事件として不動産競売手続を開始し、その後本件各不動産競売の結果、昭和六一年一二月二四日、その売却代金中二六四九万一七七一円を被告に配当する旨の別紙配当表を作成したので、原告は同年一二月二四日の配当期日に出頭して被告に対する配当のうち金一二四六万四六二一円を超える部分につき異議を申し立てたが、被告は右異議を承認しなかったため、右異議は完結しなかった。

2  原告の異議の理由は次のとおりである。

(一) 訴外木島良道、同木島はま子は、訴外木島良道が原告との信用金庫取引、手形・小切手取引により負担する債務の支払を担保するため、昭和五二年一月三一日、原告に対し、本件各不動産に極度額金二〇〇〇万円の共同根抵当権を設定し、東京法務局江戸川出張所昭和五二年二月一〇日受付第四五八八号をもって右根抵当権設定登記を経由した。

(二) 原告の訴外木島良道に対する右根抵当権の被担保債権は別紙被担保債権目録記載のとおりである。

(三) 原告は、昭和五九年四月一〇日、被担保債権のうち別紙被担保債権目録三記載の被担保債権(以下「欠落債権」という。)を誤って書き落して本件各不動産の競売を申し立てたので、昭和六一年一二月二四日(配当要求の終期経過後)、欠落債権を加えた債権計算書を提出したが、東京地方裁判所は欠落債権を考慮することなく別紙配当表を作成したため、原告に配当されるべき金一四〇二万七一五〇円が次順位債権者である被告に配当されることになった。

(四) 担保権実行としての競売申立債権者が、申立後に請求債権を拡張することを禁止する規定はない。

3  よって、請求の趣旨のとおりの判決を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2(一)ないし(三)の事実は不知、(四)は争う。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二  原告は、請求原因2の主張をするけれども、担保権実行としての競売申立債権者は、次の理由により、申立後に請求債権を拡張することは許されないものと解するのが相当であるから、右主張を採用することはできない。

1  民事執行規則一七〇条四号は、申立担保権者に、申立の段階で担保権実行の債権額の上限を確定させようとしていること。

2  被担保債権額が、登録免許税の額、過剰競売、無剰余などの判断基準となっていること。

3  申立債権者としては、競売手続中新たに競売申立をすることが可能であること。

4  請求拡張を認めなくとも、他の債権者との間の公平を欠くことにはならないこと。

三  以上によれば、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邉了造)

〈以下省略〉

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